令和7年度に重点領域研究で採択された研究の概要です(8月末)。
研究代表者:尾形 由起子
高齢化が進展し、地域で生活する人々の生活習慣病への対策は、豊かな高齢期の生活にむけて必要な予防的対策です。生活習慣病の中でも腎機能の低下し、悪化し透析に至ると本人のみならず、家族を含めた生活への影響が大きくなります。そこで、私たちは、国が公表している保健医療福祉に関するオープンデータ及び福岡県国民健康保険連合が有する、特定健診・特定保健指導データの提供を受け、データ集計・分析を実施しています。福岡県における生活習慣病の重症化によるCKD患者の実態と地域差を明らかにする研究に取り組み、特定健診受診者の健診結果データから、e-GFR値及び尿たんぱくの検査結果を基に、CKD重症度を4段階で評価しました。受診者個々のCKD重症度ステージを特定した。その後、CKD重症度と市町村別、地域差を確認しました。さらに、市町村別にCKDの重症度ステージ別割合を地図上に可視化し、県内市町村全体の傾向と地域差を確認し優先的に取り組みを進めるべき自治体を検討しています。令和5年度の結果をふまえ、CKD重症化のリスクとされている要因がどのようなものであるかについて、重症度別の重症化リスクの仮説検証を行っていきたいと考えています。
研究代表者:麦島 剛
神経科学・再生医学・情報科学は目覚ましい発展の中にある。またここから生まれた技術は、社会の在り方を根本から刷新する力を持つに至っている。一例として、脳と機械を直結するBMI 技術がある。例えば、病状の進行により身動き一つできなくなった筋萎縮性側索硬化症(LSI)患者が脳波で文字を画面表示するニューロフィードバックが実現した。今後もさらに医療・社会福祉への多大な貢献が期待される。また人工知能(AI)はさらに社会へ浸透しつつあり、社会的判断にも応用が進みつつある。これが福祉社会に対して多面的な実効性をもつことは明らかである。
基礎研究は、ものごとの原理を解明するものである。これ自体に意義があるが、実益を目的とする応用研究のためにもその原理が必須である。本研究は、第一に神経情報と生命の再生についての原理の理解を目的とする。第二に、我々の発見を社会実装するための橋渡しを目的とする。また、生命現象は数理的に非線形な現象である。そこで本研究では、非線形物理学の理論に基づいて解析を進め、生命とりわけ脳が産出する情報の新たな特質を探求する。またそれを精神生理学・精神薬理学へ応用し、精神医療の実践(診断法・心理療法)へ繋ぐことを目指す。
重点領域研究は平成28年度からスタートしました(令和2年度より研究期間が2年間になりました)。
過去3年間に重点領域研究で採択された研究課題は以下の通りです。